活動報告 JBSA東京 2025年7月20日 谷下田さん追悼セーリング
活動日:2025年7月20日
イベント名:谷下田さん追悼セーリング
事業種別:技術向上事業:定期活動、クルージング、レース練習など
活動種別:定期活動
担当支部:東京
使用艇:あほうどり
参加ブラインドの名前:内村,小倉,殿垣内
参加サイテッドの名前:児玉,安西,小柴,三場,副田,古庄
会員数:9
体験者数:0
その他:0
合計参加者数:9
開始時刻:10時24分(11時34分再出航)
終了時刻:13時22分
天候など:天気:晴れ 気温:30度 風速:20ノット
航行情報:航行時間:1時間48分 航行距離:18.3キロメートル
連絡事項:
・冷却システム稼働せず
・冷却水用インペラ付近に複数トラブル
・冷却水ボンプ付近のルートに水漏れの可能性(今後確認)
・インペラ,ベアリング,シールを交換依頼(工賃こみで1万円以内の見積)
・交換したバッテリー及び伝記系統は問題なく稼働
・燃料残量2分の1
活動のようす:
活動報告(本編) 2025年7月20日 谷下田さん追悼セーリング
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1. さよならをしに出航
伊藤さんとガイドヘルパーさんが、T-26のポンツーンから出航するあほうどりを見送ってくれた。
やげたさんが好きだったI.W.ハーパーを持ってきてくれて、「海でやげたさんにあげてください」と預かった。
「伊藤さぁーん、いってきまーす!」
たくさんの献花用の花と、やげたさんの好きだった数種類のお酒と、みんなの想いを乗せてあほうどりは、10時24分に出航した。
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2. ビフォア追悼セーリング
しかし、12分後の10時36分には、実は、戻ってゲストバースに係留していた。
エンジンを冷やす冷却水が船尾から出ておらず、これはまずいとマリーナエリア内ですぐに引き返してボートサービスに見てもらっていたのだ。
メカニックのかたがきてくれて、エンジンルームにアクセスするステップをはずしたとたん、ぶわっと煙と水蒸気があがった。
このトラブルの詳細はあえて今回は割愛するが、メカニックのかたが修理してくれている間の1時間、「ここで献杯しよう」ということになり、修理してくれている横でみんなでわいわいとやっていた。
1時間後の11時34分に再度出航したときには、結構みんな飲んでいたように見えた。あほうどりもふらついているような気もしたが、それは私の大げさな感想かもしれない。



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3. 見たことのないあほうどりの走り
風速は14ノットとみていたが、荒川に出てみると16ノット以上はふいている。若洲付近では、安西さんによれば20ノットを超えていた。
ジブを半分だけ出して走ろうということになったが、結局、フルジブになってしまい、あほうどりは大きくヒール。風上にたててジブをファーリングしてジブを半分に修正しようとしたのだが…..。
ここから先は、報告書作成者の自主検閲によりカットします。
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4. 献花
さて、そのようなわけで、あほうどりは方向をかえ、うしろから風をうけて機走し、この状態で、やげたさんへの献花をおこなうことに。
やげたさんが好きだった曲は色々あるが、献花のときは、石原裕次郎の「我が人生に悔いなし」が、彼には最もあっていると思い、この日に間に合うよう用意したBOSEのスピーカーでかけた。
この歌については、今回の活動報告書(番外編)の第一章に記したので、ここでは省略する。
「ゲタさぁーん!ゲタさぁーん!」
みんなの大きな声が、裕次郎の曲とともに、風にのっって、たくさんの白い花が次々ととんでいき、海面に着水して、流れ、そして去っていった。



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5. 大切な時間
「バカヤローー!」
一際大きな声で叫んだ児玉さんの声が、やげたさんに心を寄せてきた人々に突き刺さり、そして、その一言の叫びが、すべてが終わったことを、共にヨットに乗ってきたものたちに、本能的に感じさせた。
強風が、涙を吹き飛ばし、拭う手間を省いてくれた。
みんなが、無理に大笑いしている声が、虚しかった。
生き続けるということは、大切な人々を送り続けるということでもある。
だからこそ、送るまで、あるいは送られるまで、共に過ごせる時間を大切にしなければならない。
その後はゆっくりと、風に押されながら機走してマリーナへ向かった。献花したあとに、少しセーリングをしても良いのではとも思ったが、この後のイベントもあるからと、めずらしく皆消極的だった。


のんびりセーリングができる風ではなかったので、今回はそうした気分になれなかったのだと思う。私も、まだマリーナに戻っても、予定のバスまで3時間もあることはわかっていたが、オーナーズルームでゆっくり、やげたさんの思い出話をするのも、今回は良いかもしれないと思った。みんな、心が疲れていたような気もした。
「おいらは違うよ」と絶対おっしゃると思うので代弁しておくが、古庄さんはこの風で帰ることをとても無念がっていて申し訳ないと思った。古庄さん、またすぐ乗りましょう。
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6. やげたさんのイタズラ
ここに記してしまうとバレてしまうが、水門をくぐってマリーナエリアに入る前に、「あ!ゲタさんにお酒あげたっけ?」と誰かがいった。
色々あって、完全に忘れていて、しかし、伊藤さんが用意してくださったI.W.ハーパーが、奇跡的におちょこカップ1杯分残っていた。伊藤さんは、やげたさんにと言ったのに、みなで飲んでしまったわけだ。
これを海に、えいやっとまいてもらおうと、その役を小倉さんにお願いした。


小倉さんが、「ゲタさーん!献杯!ひゅー!」といって、I.W.ハーパーを左舷の外側へコックピットから海へむかってまいた瞬間、すべてのお酒が風で戻ってきて、小倉さんと、やげたさんの遺影がびしょびしょになり、みんな、今度は心から笑った。
完全に、風上風下のことを、ヨットマンたち全員が忘れてやってしまったのだ。
でも、やげたさんがいつも座っていた場所に置いてあった遺影にかかるなんて、さすがやげたさん。俺に酒をよこさねぇとはどういうことだと、明らかにわざとやったに違いなく、そしてざまあみろと笑っていたに違いない。
まだ当分、受け入れられないけれど、やげたさん、さようなら。また、あいましょう。
報告書作成者:殿垣内大介
